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矯正歯科
2017.04.4

抜歯用の麻酔で注射針を曲げるのは普通?むし歯の治療の関する疑問

はじめに

歯科では、虫歯や抜歯などの治療の際に麻酔の注射を行ないます。その際、親知らずや上顎の奥歯など注射しにくい場所に麻酔を行なう場合は、麻酔を打つ目標に注射針を進めやすくするために針先を曲げることがあります。実際、少し針先を曲げるだけで、注射のし易さは格段によくなります。しかし、針先を曲げるという行為は、推奨されるような行為なのでしょうか。

歯科用の注射器の構造

医科の注射では、プラスチック製の注射器に何種類かの太さのある注射針をつけて、注射薬を吸い取って使います。ガラス製の注射器は、破損のリスクがあるために現在ほとんど使われていません。

一方、歯科での麻酔注射では、それとは様相が異なります。注射器は金属製で、麻酔の注射薬は専用のカートリッジとよばれるガラス製の容器に入れてあり、カートリッジを注射器にセットし、注射針を装着して麻酔注射を行ないます。なので注射液を吸い取るという過程がありません。注射針は、一般に医科で使われる注射針にはみられないほど細いものが使われます。予防接種などで使われるものよりもかなり細いです。そのため、針先そのものが軟らかく変形しやすくなっています。

また、使用後の処理も異なります。医科の注射器は使い終わった後は、そのまま注射器ごと廃棄しますが、歯科の注射器の場合、カートリッジ・注射針は廃棄しますが、金属製の注射器は再利用しますので、滅菌過程に送られます。

麻酔の種類
麻酔の種類

虫歯治療などの歯科治療で行なう麻酔は、基本的に局所麻酔とよばれ、麻酔を効かせたい目的となる歯や歯ぐきの周辺部のみに作用させる麻酔になります。なお、局所麻酔の対極にあるのが全身麻酔とよばれる麻酔方法です。全身麻酔では、意識を消失させますが、身体自身は痛みを感じることはできます。全身麻酔をかけて手術をする時、その痛み刺激で血圧が変動することがあります。そのため、全身麻酔で手術をするときも歯や歯ぐきの局所麻酔も同時に行ないます。

<局所麻酔の種類による違い>
歯科で行なう局所麻酔は、大きく分けて浸潤麻酔(しんじゅんますい)と伝達麻酔(でんたつますい)の2種類があります。浸潤麻酔と伝達麻酔では、注射器だけでなく注射針も異なります。伝達麻酔のほうが、浸潤麻酔よりも注射針が長くなっています。伝達麻酔用の注射針を浸潤麻酔に使うことも出来ますが、長過ぎるので使いにくいため、あまり行なわれません。

注射針を曲げる理由

虫歯治療をするとき、たいていは浸潤麻酔を行ないます。前歯ならどこでも比較的注射がしやすくいです。一方、奥歯になりますと、特に上顎の最奥の頬側の場合が多いのですが、解剖学的な構造から注射しにくくなります。このとき、注射針を入れやすくするために針先を曲げる歯科医師がいます。前述の様に、歯科用の注射針は細く軟らかいため、容易に曲げることが出来るのです。注射針を曲げると、注射針を入れる方向が改善されるために、より操作性がよくなります。

院内感染対策について
院内感染対策について

病院などの医療施設内で、もともともっていなかった別の細菌やウィルスなどの病原体に感染することを院内感染といいます。これには、患者側が感染する場合だけでなく、医療従事者が感染する場合も含まれます。

院内感染対策を確実に実施するための基本的なコンセプトが、標準予防策とよばれる考え方です。これはアメリカで提唱されたものなのですが、現在、日本だけでなく世界的に標準予防策に基づいて、治療に使った器械や器材の滅菌や消毒、洗浄の実施など、さまざまな対策があります。

その中の1つに、体液曝露事故(たいえきばくろじこ)を防ぐというものがあります。体液曝露事故とは、患者様の血液や体液に医療従事者が曝される事故のことを言います。これは、医療従事者の院内感染を防ぐために行なわれるもので、代表的なものに針刺し事故の予防と対策があります。

針刺し事故として扱われる対象としては、注射針だけでなくメスなどの鋭利な器材も含まれます。こうした鋭利な器材を患者様に一度使用した場合、それは患者様の血液や体液に汚染されます。標準予防策では、患者様の事前検査の有無に関わらず、血液や体液はすべて感染源として扱われるのです。既存の感染症は大丈夫でも、未知の感染症にかかっている可能性もあると考えられているためです。ですので、針刺し事故をおこすと、患者様側から医療従事者がなんらかの感染症を移されたとみなして対応することになります。

<針刺し事故を防ぐために>
針刺し事故を防ぐために、いくつかの取り決めがなされています。たとえば、注射を行なうときは、あらかじめ現場に注射器の廃棄箱を持参しておき、採血や注射後ただちに注射器ごと廃棄するというものです。これなら使用した注射器をその状態で持ち運ぶことがないために、針刺し事故を起こすリスクを軽減することが出来ます。この時のポイントは、針先にキャップをもどさない、リキャップの禁止という点です。なぜなら、リキャップ時の針刺し事故の発生確率が高いからです。 以前は使用後の注射器を廃棄箱にまで持っていく時に針先が危ないのでリキャップをしていました。廃棄箱を近くに備えておくことで、リキャップをする必要が無くなり、針刺し事故を防ぐことができるようになりました。

<歯科での針刺し事故対策>
歯科治療での針刺し事故対策も同じです。歯科用の麻酔器のリキャップは原則的に禁止です。原則的というのは、歯科の場合、治療の際に追加で麻酔薬を注射しなければならないことがあるからです。親知らずの抜歯や、大きな虫歯が出来て奥歯の神経をとらなければならないような歯科治療の場合は、注射器をすぐに処理せず手元においておくことがあります。その場合は、リキャップすることがあるのですが、針刺し事故を防ぐために片手ですくいあげる様にしてリキャップする方法が提唱されています。

また、針先を曲げるという行為は、指先を針先に近づけるので、曲げる際に針刺し事故を起こす可能性が高いだけでなく、針先が破損する原因にもなります。このため、針先を曲げるということは、細心の注意が必要であることとともに、あまりお勧めできる行為ではないのです。

まとめ

抜歯だけでなく虫歯の治療でも、歯科では麻酔が行なわれることがあります。その際、特に上顎の奥歯など、注射が行いにくい場所に麻酔をうつ場合に、注射針の先を曲げることがあります。

ただご紹介の通り、針刺し事故のことを考えると注射針の先を曲げることはお勧めできません。根本的なリスクを回避するにはやはり、抜歯や虫歯にならないことも大切です。

普段の歯のブラッシングの徹底はもちろん、歯並びが悪いと虫歯になる可能性も高まります。歯並びの状態が悪くならないよう、早い段階で矯正治療をはじめられたり、虫歯治療を行われることをお勧めします。

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