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矯正歯科
2017.04.16

「日本人の顎が小さくなっている」は迷信?本当は歯が大きいことが原因の可能性

はじめに

昨今の日本人はそのほとんどが歯並びが悪く、矯正が必要であると認識している方も非常に多いようです。しかし、どうしてこれほどまで日本人に歯並びの悪い人が多いのでしょうか。その理由について、世間一般では「時代が進み食文化が変わって顎が小さくなってしまっため」という見解が広く浸透しているようです。

しかしはたしてそれだけの理由により歯並びは悪くなっているのでしょうか。というのも、日本人の歯並びが悪い理由には、日本人の食文化の影響だけでなく人類学的な問題も絡んでいるのだそうです。

今回は、日本だけでなく世界でもあまり知られていない、日本人の歯並びが悪くなってしまう人種的な要因について触れてみたいと思います。

現代人の顎は小さくない?

現代の子供はその多くが永久歯の大きさと顎の大きさが釣り合わずに矯正が必要になっていることから「日本人の顎は小さくなっている」と感じている人は多いようです。しかしそれは目の前の状況だけしか見ていないゆえの早合点に過ぎません。その理由は、遠い昔から現在にいたるまでの日本人の下顎の発達の推移の仕方にあります。

その歴史は縄文時代や弥生時代までさかのぼります。縄文時代、我々の祖先は動物の狩猟による食生活が中心でした。その後、弥生時代に移り変わると農耕文化がはじまり、肉類だけでなく穀物を食べるようになります。このことにより食事で噛む回数が増え、縄文時代に比べると下顎が大きく発達していくようになります。

しかしその後、時代が進むごとに日本人の顎は小さくなっていきますが、明治時代に入るとふたたび下顎が大きく発達していくようになるのです。こういった推移の背景には「江戸時代では肉類の食べ物が好まれていなかったこと」、「明治時代以降はあらゆる食べ物の栄養価が高くなるため」といった見解があります。つまり、時代が進むごとに弥生時代のように「たくさん噛む食生活」は減っていくため、それに伴い一時的に顎は小さくなっていきました。

しかし時代は進み、食品の加工ができるようになったことで栄養が豊富な食べ物を簡単に摂取できるようになっていったことから、ふたたび日本人の顎は発達していったのです。ちなみに日本人の平均身長の推移にも注目すると、1950年代、男性の平均身長は約160センチ、女性の平均身長は約149センチでした。そして2010年以降の男性の平均身長は170センチ、女性の平均身長は158センチとなっています。顎の発達と身長の発達は深くつながっていますから、昔に比べて体が大きくなっているのに対し、顎だけが小さくなっているということは理論上ありえないことと言えます。よって現代の日本人の顎が小さくなっているというのは錯覚であり、昔に比べると日本人の顎は大きくなってきていると考えるのが自然なことであるという結論に至るのです。

祖先の遺伝子
祖先の遺伝子

次に「日本人」という人種の歯の特徴についてご紹介します。我々日本人の祖先は、大きく分けて「縄文人」と「弥生人」に分類されます。「縄文人」は東南アジアより沖縄を経由し日本列島に移住してきた人種であり、「弥生人」は中国大陸から日本に渡来してきた人種であるとされています。

「縄文人」は彫りが深いくっきりとした顔立ちに小さな歯が特徴であり、「弥生人」は彫りが浅い平坦な顔立ちに大きな歯が特徴です。現代の日本人はそのほとんどが「縄文人」と「弥生人」の混血であるとされています。そのため、歯が小さいために顎が小さい「縄文人」の特徴と、歯が大きい「弥生人」の特徴を受け継いでいる方は歯並びが悪くなりやすい傾向にあるようです。またその逆の場合、顎が大きい「弥生人」の特徴と歯の小さい「縄文人」の特徴を受け継いでいる方は全体的に隙間がある歯並びになるようです。

このように食文化の推移に関わらず、遺伝的な要因から歯並びが悪くなりやすい要素を我々は持ち合わせているのです。

歯並びに対する正しい認識

歯並びが悪くなる原因について、食生活といった環境的要因も全くないとはいえませんが、食事の改善による顎の骨の発達の促進だけではカバーしきれない事実もあります。それが遺伝的要因によるものです。

もともと生まれつき顎が小さく、歯が大きい傾向にある場合、矯正をせずに顎を大きくし歯並びを良くしようとするためには、体も大きくなるようにしなくてはいけません。体が成長すればそれに伴い顎も自然と大きく発達するためです。よって将来的に歯並びが悪くならないように顎の骨を発達させる食生活を心がけても、やがて生えてくる永久歯が大きすぎるために歯並びが悪くなってしまう可能性もあります。

あえて心がけるのであれば、可能な限り体が成長するよう食生活を心がけるほうが現実的であると言えます。さらに乳歯の歯並びが良いというお子様も要注意です。子供の乳歯はもともと永久歯より非常に小さく、乳歯のうちから歯並びが悪くなることは滅多にありません。よって歯の生え変わりが始まることにより、歯並びの崩壊も始まる可能性は十分あるのです。

海外での歯科治療の落とし穴
海外での歯科治療の落とし穴

人種の違いにより顎の大きさや歯の大きさが異なることは我々の祖先の例で理解していることです。そのため、海外で歯の治療を考えているという方は大きな落とし穴が潜んでいることに注意が必要です。

白人が大半を占める欧米人や黒人もまた我々日本人とは異なる特徴を持っています。よって海外で行っている歯の治療はその国の人種の特徴に合わせた方法で行われており、日本人の特徴に合わせた治療は行われていないのです。

たとえば白人の場合、顎を含め全身の骨格が日本人よりも発達しています。下顎は日本人よりも長く発達しており、口のなかは見た目よりも大きく奥行きがあります。また歯の形は全体的に丸みのある日本人の歯と比べると四角い形に近く、奥歯の咬合面(噛み合わさるところ)はほぼ平らです。さらに全体の歯は日本人の歯よりも小さく、それにも関わらず歯の厚みは日本人の歯よりもあるため、歯のなかの神経は細く歯の根がとても長くなっています。そのため日本人よりも知覚過敏になりにくく、大きな虫歯になっても歯の神経を取らずに済むことが多いです。

つまり白人に比べ、歯の厚みがなく骨格も発達していない日本人の治療は、その国の歯科医にとって非常に慎重を要するものであり、不得手と言えるのです。そのため海外で治療をすることにより想像以上に治療に手間取ってしまったり、歯に合う被せ物が作れないといったことが起こりえる可能性があるのです。万が一、海外の歯科医院で歯の治療を行う場合、こういったリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。

矯正治療は日本人に必要なもの

現代の日本人の顎は決して小さくなっているわけではないものの、遺伝的な顎と歯の大きさのバランスにより歯並びが悪くなりやすいことがわかりました。また食品から得られる栄養が多くなると、顎だけでなく歯も大きくなると言われています。

このことから現代の日本人は生まれながらに歯並びが悪くなる宿命にあり、歯科矯正は日本人にとって必要不可欠な治療になるということです。そうなると矯正治療も少しずつ保険適用の治療になっていくかもしれません。

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