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矯正歯科
2017.04.25

矯正治療で動かない歯とは?原因と対策について

はじめに

子供だけでなく大人の方のあいだでも増えている歯の矯正治療。そのため小児矯正についてだけでなく、成人矯正にも強い関心や疑問を持つ方が多くなってきています。そして今回は、矯正をしている患者様が日々感じる矯正についての疑問のなかでごくまれに生じる問題点についてご紹介します。それは『長く矯正をしているのに動かない歯がある』という問題です。

このようなケースはあまり多くないものの、実際に矯正歯科医がこの事態に遭遇した場合、非常に厄介な問題とされるそうです。ではなぜ「動かない歯」があるのか、そのいくつかの理由とそれぞれの対処についてご紹介します。

歯が動くメカニズム

「動かない歯」がある原因について触れる前に、まずは矯正治療の基礎である「歯が矯正によって動く理由」についてご説明したいと思います。歯は矯正できて当たり前と思われている方は多いかもしれませんが、その具体的な理由について理解している方はあまり多くはないかと思われます。矯正歯科でもなかなか説明されることのない「矯正のメカニズム」について、ある骨の特徴とともにご説明したいと思います。

<骨の代謝>
我々の全身の骨は常に代謝を繰り返しています。内側から新しい骨が作り出され、外側にある古い細胞の骨は破壊されるというサイクルです。これは丈夫な骨を維持するためには必要なことであり、また骨折により骨が折れてしまっても時間が経てば治る理由でもあります。

この「骨の代謝」は、ある「2つの細胞」の活動によって行われています。この細胞の活動が低下してしまうとうまく「骨の代謝」が行われなくなり、「骨粗鬆症」になってしまうおそれがあるのです。

<破骨細胞>
「骨の代謝」を行っている「2つの細胞」のうち、古くなった外側の骨の組織を破壊している細胞を「破骨細胞(はこつさいぼう)」と呼びます。「破骨細胞」は、時間の経過とともに内側から外側に押し出され、やがて組織が古くなり脆くなった骨を溶かして破壊する役割を担っています。

この細胞の活動をコントロールしているのは「副甲状腺」から分泌されるホルモンと、「カルシトニン」というホルモンです。「副甲状腺」のホルモンは「破骨細胞」の働きを促し、「カルシトニン」は「破骨細胞」の働きを抑制する役目を持っています。

2つのホルモンのバランスにより「破骨細胞」の活動はコントロールされているのです。そのため「副甲状腺」が何らかの理由により病気になると、ホルモンのバランスが崩れ「破骨細胞」の動きが異常に活発になり「骨粗鬆症」になってしまうことがあります。

<骨芽細胞>
「骨の代謝」を行っている「2つの細胞」のうち、骨の内側から新しい骨の組織を生み出している細胞を「骨芽細胞(こつがさいぼう)」と呼びます。この「骨芽細胞」は、骨の内側から新たな骨の形成を促す役割を担っています。この細胞をコントロールしているのが「アンドロゲン」というホルモンと、「エストロゲン」というホルモンです。

「アンドロゲン」とは別名「男性ホルモン」と呼ばれており、「エストロゲン」とは別名「女性ホルモン」と呼ばれています。「アンドロゲン」は「骨芽細胞」の活動を抑制し、「エストロゲン」は「骨芽細胞」の活動を促す役目を持っています。そのため加齢により閉経した女性がその後「骨粗鬆症」になるリスクが高まるのは、閉経により「エストロゲン」の分泌が低下してしまうことにあります。

<骨の代謝を利用した歯科矯正>
歯並びの矯正は、この2つの細胞によって行われている骨の「破壊」と「形成」を利用して行われています。矯正装置によって歯を動かそうとした際、歯を動かしたい方向にある骨は押す力をかけられ続けることにより破壊されます。逆に反対側の歯を引っ張られたことにより歯と骨のあいだに隙間ができたところは、新たに骨が作られます。この顎の骨の状態の変化により歯は少しずつ移動していき、矯正が可能になるのです。

歯が動かない原因
歯が動かない原因

では改めて「なぜ動かない歯があるのか」について触れていきたいと思います。矯正をしたいのにどうしても動かない歯があることにはいくつかの原因があります。また「動かない歯」の有無は、歯のレントゲンを撮り検査をしたり、過去にどのような歯の治療をしたかを調べることにより判明することもあります。ここでは歯が動かないおもな原因についてご紹介します。

<歯の根が曲がっている>
矯正をしても歯が動かない理由のひとつとして、「歯の根が曲がっていること」があげられます。正常な歯の根はまっすぐ下に向かって伸びています。しかしなかには歯の根が全体的に湾曲している歯や、根の先端が横方向に曲がっている歯などもあります。歯の根の状態はレントゲンで確認をすることができますが、レントゲンでも気づくことができない湾曲があった場合、それが原因となって歯が動かないことがあります。しかし決して動かないわけではなく、歯の根の状態をよく調べることで動きやすい方向を把握し、矯正の方法を改善すれば動かせるようになることもあります。また歯の根が曲がっている方向によっては移動させたい場所に動かすことが難しい場合もありますので、医師とよく相談をし、矯正をするようにしましょう。

<歯が骨に癒着している>
矯正をしても歯が動かないもうひとつの理由は、「歯が顎の骨と癒着していること」です。これは歯が動かない理由としてもっとも厄介と言われており、場合によっては矯正が不可能となることもあります。しかしなぜ「歯の根が顎の骨と癒着すること」があるのかというと、その理由は歯と顎の骨の間にある「歯根膜」という組織にあります。

「歯根膜」は健康で自然な歯であれば必ず存在している軟らかい組織であり、歯と顎の骨の間に存在することで歯が受ける衝撃を緩和する役割を持っています。またこの「歯根膜」があることで歯は僅かに動くことができ、歯を左右に動かすとかすかにグラグラします。

しかし歯に強い衝撃を受けるような外傷を負ったりした場合、この「歯根膜」の組織が傷つけられることがあります。それにより「歯根膜」が失われると、骨は失った「歯根膜」の代わりに新たな骨を形成しようとします。その際に歯の根を吸収してしまうことにより歯と骨が癒着してしまうのです。

そのため健康な歯はほんの少し動くことが正常であり、この時歯を動かしてもグラグラしなかった場合、歯が顎の骨と癒着している可能性が高くなります。また実際に歯と顎の骨が癒着してしまっている場合、いくつかの処置をすることで矯正が可能になることもあります。そのひとつは「脱臼処置」といい、歯を動かすことであえて歯が抜けそうな状態にし、癒着した歯を骨から剥がす方法です。

さらに「コルチコトミー手術」という方法もありますが、これは少々大がかりな外科治療になります。そのため「コルチコトミー手術」を希望する場合は、治療後の大きな負担も考慮した上で実行するか否かを担当医とよく相談するようにしましょう。

<その他>
矯正をしても歯が動かない理由として、そのほかにもさまざまな例があります。たとえばすべての歯のなかでも特に動きにくいと言われているのが「犬歯」という歯です。「糸切り歯」とも呼ばれているこの尖った歯は、全体のなかで特に根が長くもっとも抜けにくい歯です。そのため動かそうとするとなかなか動かないといったことは非常によくあるケースです。

また「顎の骨の状態」によって歯が動きにくいこともあります。「顎の骨」は人によって個性があり、それにより歯が動きやすい場合と動きにくい場合があるのです。特に「歯が動きにくい」といわれているのが「短顔型」の方です。噛む力が強く、顎の骨が発達した「短顔型」の方は顎の骨の骨密度が高く、なかなか骨の破壊と形成がスムーズに行われにくいことから歯が動きにくいと言われています。

事前の検査が重要
事前の検査が重要

歯は顎の骨と癒着している場合を除き、歯が動くスピードが遅いか早いかだけの問題であり矯正は可能です。また顎の骨と癒着している歯がないかどうかを確認するためには、CT撮影をしただけでは発見が難しいことがわかっています。そのため熟練の矯正歯科医は、矯正を始める前にすべての歯をわざと左右に動かしてみたり、軽く叩いてみたりすることがあります。

「骨と癒着している歯は矯正が難しい」ということを理解している熟練の矯正歯科医であれば、もし動かない歯を発見しても冷静に対処することができるでしょう。ぜひ参考にしてみて下さい。

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