矯正歯科 コラム
矯正歯科
2017.09.13

顎なし骨格には歯列矯正が有効?

はじめに

日本人に多く見られる、顔を正面から見ると顎がないように見える「顎なし骨格」。この特有の顔つきにコンプレックスを感じているいる人は非常に多いようです。

面長な白人に比べると丸顔が特徴である日本人は、このほかにさまざまな要因が重なり顎なしに見えてしまうものですが、それを歯列矯正をすることで改善することができます。

今回は、多くの日本人が顎なし骨格に見えてしまう原因と、歯列矯正による顎なし骨格の治し方についてご紹介します。


顎なし骨格に見える原因
顎なし骨格に見える原因

もともとアジア人は短顔型という顔が丸く見える人種であり、長顔型である白人と比べてしまうと顎なしに見えてしまうのはやむを得ません。しかし短顔型だからといって顎がないというわけではなく、歯並びの状態や顎の形状が原因で顎なしに見えてしまうようです。

では具体的にどういったことが原因で顎なし骨格に見えてしまっているのかをご紹介したいと思います。

■顎の大きさと歯の大きさのバランス
日本人の歯と顎のバランスは、もともとあまり良くないといわれています。その理由は、顎の骨格があまり大きくないのに対し、歯は非常に大きいためです。

以前、歯並びが悪くなってしまう理由は、食育の問題により多くの子供の顎の骨格がうまく発達できないためと言われていました。しかし、それが改善された現在でも歯並びが悪くなってしまうケースは減少していません。

このことから歯並びが悪くなってしまうのは顎の発達が不十分なのではなく、顎の大きさに対して歯が大きいためと考えられるようになったのです。そうなると、今後成長に伴い歯の生え変わりを迎える子供の多くは、顎と歯のバランスが悪いために歯並びが悪くなる可能性が高いと言えます。

■上下顎前突症
歯並びが悪くなると全体的に歯がデコボコしてしまうため、いわゆる八重歯になってしまうものです。そのため歯がデコボコにならずにきれいに並んでいれば歯並びが良いと判断する人が多いかと思います。

しかし、歯はちゃんときれいに並んでいるのに顎なし骨格に見えてしまうという人も多いのではないでしょうか。その原因は「上下顎前突症」にあると思われます。

「上下顎前突症」とは、上下の前歯、もしくは片方の前歯が前方に飛び出し、いわゆる出っ歯になってしまっている状態を指します。これは全体的な歯並びの状態に関わらず、顎のスペースが足らないために前歯が後ろから押し出されてしまうために出っ歯になるのです。

ちなみに顎なし骨格に見えるのは、上顎の前歯が出っ歯になっている場合と、上下の前歯が出っ歯になっている場合です。よって「上下顎前突症」が原因の場合、顎なし骨格の治し方は歯列矯正ということになります。

また「上下顎前突症」の場合、唇を閉じようとすると下顎に梅干のようなシワができることが特徴です。これは唇を自然と閉じることができないために、頤(おとがい)の筋肉が緊張してしまうことで起きる現象です。

そのため口を閉じている時に顎にシワができてしまう方は「上下顎前突症」の可能性が高いと言えます。この場合は歯列矯正をすることで顎なしに見える顔つきを改善できると言えます。

■アデノイド顔貌
顎なし骨格に見える顔つきとして、「アデノイド顔貌」というものが非常に有名です。「アデノイド顔貌」とは鼻の奥の方にある「アデノイド」というリンパ組織が異常に発達してしまっているために、鼻から下の口元が下に伸びたような顔つきになることです。

この場合、歯並びだけでなく「アデノイド」による口呼吸が原因であるため、歯列矯正による治し方だけでは不十分になってしまう可能性があります。異常に発達してしまった「アデノイド」の治療も必要であり、「アデノイド」を治療できるのは耳鼻咽頭科となります。

よって「アデノイド顔貌」による顎なしの顔つきの治し方は、歯列矯正と「アデノイド」の治療を併せて行うことをおすすめします。

なぜ日本人は顎と歯のバランスが悪いのか?

日本人は生まれつき顎と歯のバランスが悪くなりやすいということがわかりました。しかし顎があまり大きくないにも関わらず、なぜ歯は大きくなってしまったのでしょうか。

まだ矯正治療がなかった時代は、矯正を行わなくても歯並びが良い人は多く見られました。ところが時代が進んでいくごとに歯並びが悪くなってしまう人は多くなっていき、歯列矯正が求められるようになっていきました。

この背景には「食べ物の変化により摂取できる栄養の量が変わったこと」があると言われています。もともと日本の食事は「粗食」の傾向にあったと言われています。今のように食べ物や料理の種類も豊富ではなく、また飽食とも言えませんでした。

しかし、その後、海外からあらゆる食べ物や食文化が取り入れられるようになり、また食品加工の技術も進んでいったことで日本の食事は栄養が豊富になっていきました。それにより、もともと小さい傾向に合った日本人の歯が少しずつ大きくなっていったとも言われています。

顎変形症の場合は外科治療も必要
顎変形症の場合は外科治療も必要

顎なし骨格の原因の多くは歯並びと顔つきによるものですが、上下の顎の位置があまりに大きくずれていたり、それにより噛み合わせに異常が出ている場合もあります。これを「顎変形症」と呼びます。

「顎変形症」の場合、顎関節にも異常があらわれていることがあり、口の開閉がうまくできなかったり、顔が左右に変形していることなどもあります。この治し方は歯列矯正だけでは足りず、外科手術で顎を正しい位置に戻す処置が必要になる場合があります。

また矯正治療は基本的に自己負担となる治療ですが、「顎変形症」による外科治療と矯正治療は保険治療として適用されますのでご参考にしてみてください。

顎なし骨格は健康にも影響する?

顎なしに見えることは決して見た目だけの問題とは限りません。先程の「アデノイド顔貌」のように鼻呼吸が難しい方の場合、口呼吸をしていることが多く、口のなかが乾燥しているために風邪を引きやすく、また治りにくいと言われています。

さらに顎の位置が下がっている場合、その影響で気道が狭くなり、大きないびきが出るようになったり、睡眠時無呼吸症候群になるおそれもあります。このように健康にも影響するおそれがある顎なし骨格は、可能であれば症状があらわれる前に歯列矯正で改善することをおすすめします。

顎なしに見える原因はさまざま

あまり顎の骨格が発達していない日本人は、歯並び以外にもちょっとしたことで顎なしに見えてしまうことがあります。

たとえば姿勢が悪いために顎が下がっているように見えたり、口の周りの頬がたるんでいるために顎がないように見えたりすることもあります。その場合は普段の悪い癖を治したり、口周りの筋肉を鍛えることで顔つきが変わることがあります。

しかし歯並びが原因であったり、アデノイドが原因である場合は自然と改善されることはないので、矯正歯科で治療の相談をするようにしましょう。