矯正歯科 コラム
矯正歯科
2017.11.16

歯科治療で使われる抗生物質とは

はじめに

歯科治療において、抗生物質を処方されるケースはしばしば見られます。矯正治療でも抜歯を伴うケースでは必ずと言っていいほど、抗生物質が処方されます。この抗生物質ですが、歯科治療で使われるものはどんな種類があるのでしょうか。


抗生物質と抗菌薬の違いとは

医科では日常的に処方される抗生物質ですが、抗菌薬とどのように違うのか、まずここからお話を進めていきましょう。

抗生物質も抗菌薬も、細菌感染に対し有効な薬のことです。どちらも微生物によって作られた化学物質で、細菌を殺し、増殖を抑える役目があります。この二つには若干の違いがあり、抗生物質は微生物が生産した化学物質、抗菌剤は微生物が生産した化学物質に人工合成された化学物質を加えた物です。

現在では抗菌剤という広い範囲の中に抗生物質が含まれていると解釈されています。つまり抗生物質も抗菌薬も、細菌に対する薬という意味合いで同じと考えていただければ問題ありません。医科における主な病原体として、細菌ではブドウ球菌、サルモネラ菌などがあり、O157などが主な感染症です。歯科において代表的な病原体は、歯周病を引き起こす歯周病菌です。

なおウイルスや真菌(カビ)は抗生物質や抗菌剤では効き目がありません。インフルエンザやヘルペスなどはウイルスによる感染症、白癬症やカンジダは真菌による感染症です。細菌が原因ではなく、ウイルス感染、真菌による感染のため、抗生物質ではなく抗ウイルス剤や抗真菌剤が使われます。歯科における真菌は、口腔カンジダ症を引き起こすカンジダ菌があります。

よく処方される抗生物質と抗菌剤の種類
よく処方される抗生物質と抗菌剤の種類

内科や耳鼻科などで処方される抗生物質および抗菌剤は、次のようなものがあります。非常にたくさんの系統があるため、よく目にするもののみ抜粋してみました。

■抗生物質
ペニシリン系…殺菌的な効果を持ち、細菌の細胞壁合成を阻止する働きがあります。商品名として名が知れているものに、サワシリン、ユナシンなどがあります。

セフェム系…ペニシリン系同様、細菌の細胞壁合成を阻止します。商品名としてはフロモックス、メイアクト、セフゾンなどがあり、歯科でもよく使われます。

マクロライド系…細菌のタンパク質合成を阻止し、効き目は緩やかです。商品名としてクラリシッド(クラリスと呼ばれるもの)、ジスロマックなどがあります。ジスロマックは歯周内科でよく処方される抗生物質です。

テトラサイクリン系…マクロライド系と同じく、細菌のタンパク質合成を阻止します。商品名としてモノマイシン、ビブラマイシンなどがあります。なおテトラサイクリン系の抗生物質を長期投与することで、歯に着色することがあります。

歯科で使われる薬について

歯科でも抗生物質はよく使われます。例えば抜歯後や膿を切開した後の化膿止めとして処方されるもの、歯周病治療の歯周内科として処方されるものの他、歯科領域における感染症である「歯性感染症」に対して処方されます。少し難しいお話かもしれませんが、歯性感染症とそれに対し処方される抗生物質、抗菌剤について触れてみます。

歯性感染症は「歯周組織炎」「歯冠周囲炎」「顎炎」「顎骨周囲炎」の4つに分類されます。「歯周組織炎」は歯髄炎が歯の根元に及ぶケース、根管治療による感染、そして歯周病による炎症などによるものです。抜歯後の感染症もここに属します。

「歯冠周囲炎」は、親知らず周囲に起こる感染症で、生えかけの親知らず周囲に汚れが溜まり、炎症を起こす状態を言います。そのままにしておくと、炎症が顎にまで広がり、重篤化する恐れがあります。

「顎炎」は、歯周組織炎、歯冠周囲炎が悪化し、顎にまで炎症が広がった状態のことです。飲み薬だけでは対処が難しく、抗菌剤を注射するなどの処置になってきます。

また舌下や頬に炎症が広がった場合、重篤な感染症となってしまいます。歯性感染症に対する抗生物質や抗菌剤の投与の目安は3日間とされており、改善が見られない場合や悪化の傾向がある場合、外科処置を行い、抗生物質の変更などを行うことがあります。程度の軽い感染症の場合、ペニシリン系抗菌薬が第一選択肢となることが多く、次いでマクロライド系が選択肢となります。特にペニシリン系にアレルギーのある患者様は注意が必要です。

矯正歯科における抗生物質の処方について

一般治療と同様、矯正治療でも抜歯を伴うケースはよくあります。矯正歯科では親知らずや小臼歯を抜歯することが多いですが、歯を抜いたあとは感染しやすい状態となっているため、抗生物質と痛み止めが処方されます。

よく処方されるものとしてクラリス、フロモックス、ケフラールなどがあります。なお抗生物質や抗菌薬は体質に合わない場合があります。特にペニシリン系はアレルギーを持つ方も多いようです。トラブルを防ぐためにもお薬に対するアレルギーの有無をきちんと確認してから処方しますので、安心してください。

もし抗生物質を飲まなければどうなるのか
もし抗生物質を飲まなければどうなるのか

処方された抗生物質は、必ず飲み切らなければいけません。抜歯後の腫れや痛みが落ち着いたからといって、処方された抗生物質を勝手に辞めることは避けてください。抗生物質は腫れや炎症を抑える効果があります。腫れなどの症状が落ち着いても、細菌はまだ完全に消滅したわけではありません。口腔内には様々な細菌が存在し、傷口が完全に癒えていないところに細菌感染すると、治まりかけた腫れや痛みなどの症状が再発する可能性があります。また自己判断で飲む量や期間を変えることで、細菌の活動を抑えられなくなってしまいます。

こうなるとせっかく減った細菌が再び増殖し、症状がなかなか治まりません。これでは再び細菌感染するリスクが非常に高くなってしまいます。症状が悪化して再び抗生物質を飲むというループを繰り返すと、細菌に対する耐菌性ができてしまって今度は抗生物質が効かなくなる可能性があります。抗生物質の効きが悪くなると細菌感染した際に炎症が治まらず、骨まで広がる恐れがあります。医師から処方された抗生物質は自己判断で勝手に止めず、必ず最後まで飲み切ってください。なお、痛み止めは痛みが治まれば飲まなくても大丈夫です。

安心して矯正治療を受けていただくために

抗生物質についてお話をいたしました。歯科では比較的よく処方され、矯正歯科においても抜歯を伴うケースなどで抗生物質を飲んでいただきます。

当院は矯正専門歯科であり、必要に応じて抜歯などの処置を行います。その際患者様の状態に合わせてお薬を処方いたします。安心して歯並びの治療を受けていただくために、もし処方されるお薬に関して不安などがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。