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矯正歯科
2016.08.13

矯正治療前の確認!歯と骨の関係性とは

はじめに

歯並びについて意識され、矯正治療をお考えの方は矯正治療がどういった治療なのか、どんな種類があるのかなどは、知っている方が多いのではないでしょうか。では、実際矯正治療を行った際、歯や骨にどんな変化が起こって歯が移動し、歯並びが改善されていくのか、ご存知ですか。

ここでは、矯正治療により実際に口の中で起こっている現象について詳しくご説明し、その上で意識していただきたい事についてお伝えしたいと思います。

歯と骨の仕組み
歯と骨の仕組み

歯は歯槽骨という歯茎の骨に支えられていていますが、歯と歯槽骨は直接くっついているわけではありません。歯と歯槽骨の間には歯根膜という組織が存在しています。歯根膜には、シャーピー繊維という強靭な繊維が存在し、この繊維が歯のセメント質という部分と歯槽骨を硬く結び付けています。歯根膜は衝撃をやわらげるクッションの働きをしていて、この組織がある事で噛んだ時に歯に加えられる力が分散され、バランスを保ちながらスムーズな咀嚼ができるようになっているのです。

歯肉、歯根膜、歯のセメント質、歯槽骨を合わせて、歯周組織といいます。歯石などの影響で歯周組織に炎症が起こると、歯槽骨が溶けていきます。この状態が歯周病です。歯根膜の中には、繊維組織の他に様々な細胞(繊維芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、セメント芽細胞など)や毛細血管、神経、リンパ球などがあり、植立作用や緩圧作用に加え、他の歯周組織の形成や破壊、栄養補給や免疫に関与しています。

矯正治療中の歯と骨の変化
矯正治療中の歯と骨の変化

ここまで、私たちの口の中で歯と骨がどういった構造になっているかを説明しました。ここからは、矯正治療を行った際にその構造にどういった変化が起こり、どうやって歯が動いていくのかを説明していきます。

矯正治療における歯と骨の変化には、先ほど説明した歯周組織のうちの歯根膜が重要な役割を果たしています。歯根膜の厚さは0.15~0.38㎜と、とても薄い膜ですが、「常に一定の厚さを保とうとする性質」を持っています。歯に矯正力が加わると片側の歯根膜が伸び、反対側の歯根膜は圧縮されます。そうすると、歯根膜はこの性質により歯と骨が直接接触してしまうのを避け、バランスを保つため一種の防御反応的な変化を起こすのです。

「歯根膜には様々な細胞が含まれている」と前述しましたが、そのうちの「骨芽細胞」と「破骨細胞」がこの変化に大きく関わります。伸びた側の歯根膜の歯槽骨面には「骨芽細胞」が現れます。骨芽細胞とは、骨を形成するための細胞で、この細胞の出現により歯根膜が伸びて広くなった部分に歯槽骨が新しく作られます。逆に、圧縮された側の歯根膜の歯槽骨面では「破骨細胞」という細胞が現れます。破骨細胞は、骨を溶かす細胞で、この細胞の働きにより圧縮されて狭くなった部分の歯槽骨が徐々に溶けていきます。このように、片側では骨形成が起こり、反対側では骨吸収が起こる事で歯根膜が一定の厚みに保たれ、その結果歯が動いていくのです。

このような骨形成と骨吸収による変化は自然の状態でも成長に伴って行われており、骨吸収により古くなった骨が壊れる一方で、新しく骨が作られる骨形成を繰り返して新陳代謝を行っています。

矯正治療はこの「骨の代謝機能」を活かした治療で、歯に弱い矯正力をかけることにより部分的に骨形成と骨吸収を起こして徐々に歯槽骨の中の歯を移動させているのです。この仕組みの関係上、事故などで歯根膜がつぶれ、歯が歯槽骨に癒着を起こしてしまったような場合は矯正治療をおこなう事が困難になります。

矯正治療を行う前に知っていただきたい事
矯正治療を行う前に知っていただきたい事

歯と骨の関係性や歯根膜の働きの説明により、「歯が動く仕組み」は分かっていただけたかと思います。

矯正治療を行う際、「もっと早く動かせないのか」「短期間でできないのか」と希望される人が多いです。しかし、先ほど説明したように矯正治療は「骨の代謝機能」を利用して歯を動かしています。歯を動かすには適正な矯正力というものがあり、強い力をかけたから歯が早く動くというものではありません。

個人差はありますが、適正な力で徐々に歯を動かしていく場合のスピードは、一ヶ月で0.5~1㎜ほどになります。

強すぎる力がかかるとどうなるのか
強すぎる力がかかるとどうなるのか

では、実際に強すぎる力がかかったらどうなってしまうのでしょうか。大きくは以下の2つの現象が起こる事が考えられます。

●変性組織の形成や癒着
前述したように、歯根膜には毛細血管も含まれており、歯根膜が圧迫され過ぎると血流が滞って壊死してしまいます。壊死により変性組織が形成されると、変性組織は歯の移動を妨げ、強い痛みを引き起こします。

また、この状態が長く続くと、歯と歯槽骨が癒着を起こします。癒着を起こした場合、歯根膜の働きが得られなくなるため、矯正治療が困難になってしまいます。

●歯根吸収
強すぎる力により破骨細胞が活性化しすぎると、破骨細胞が間違って歯の根っこを溶かしはじめます。歯槽骨は移動に伴い一時的に溶けても骨芽細胞により再生していきますが、歯には再生能力がなく元には戻りません。

まとめ

歯と骨の関係性や、矯正治療における歯の移動の仕組みについて、ご理解いただけたでしょうか?

矯正治療には、今回説明した「徐々に歯を動かす矯正治療」とは別に、歯を削って短期間で歯並びを整えるセラミック矯正治療などもあります。

時間をかけて徐々に歯を動かす矯正治療は、長い時間がかかってしまうというデメリットはあるものの、身体が元来から持ってる機能を上手く活かし、歯に負担をかけずに行う治療法だと言えます。

歯を削って短期間で歯並びを整えるか、歯に負担なく長い期間をかけて歯並びを整えるか、どちらの方が、メリットが大きいのかは予算なども含め選ぶ方によって違ってくるでしょう。ただ、できれば単純にメリットデメリットだけでなく、その仕組みや自身の身体に起こる事も知ってもらった上で、自分にあった矯正法を選んでもらえればと思います。いずれにしろ、矯正治療により歯並びによるコンプレックスが解消され、お口の中が長く健康に保たれる事はとても素晴らしい事ですね。

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