矯正歯科 コラム
矯正歯科
2016.11.26

歯列矯正中の食いしばりの原因は?治療にどう影響するのか

はじめに

歯列矯正は治療が難しいものほど治療によるストレスがつきまとってくるものです。日々、歯に感じる痛みと違和感が原因となり、無意識に歯を食いしばってしまうことは決して珍しくない行為です。食いしばりは強く歯を噛み合わせることで心身のストレスを一時的に緩和できることから、意図的にあるいは無意識に行ってしまう悪癖のひとつです。

食いしばりをすることでストレスを発散できることから、人はストレスを感じると無意識のうちに食いしばりを行っていることがあります。しかし、食いしばりは歯にとってあまり良い行動ではなく、歯科医師は食いしばりをしている可能性がある患者へ注意を呼びかけています。

今回は食いしばりについての詳しい説明と、矯正中に行われる食いしばりの影響についてお話しします。

食いしばりの特徴

食いしばりは歯科医師の間では『クレンチング』とも呼ばれています。『クレンチング』とは、上下の歯の強い噛みしめ、感情的、精神的あるいは肉体的ストレス、緊急事態における緊張動作時や全身運動時に発現するものなどを指します。

すなわち心身に強いストレスを受けている時だけでなく、全身に力を入れる必要がある時にも食いしばりは行われているのです。そのため食いしばりをしている原因をこれと特定することはとても難しく、さまざまな理由が重なり合って食いしばりが行われている可能性が高いのです。

さらに食いしばりは人によって歯にかかるパワーが異なるため、食いしばりによって歯に違和感や痛みを覚えている方もいれば、何の症状も感じていない人もいます。歯に症状を感じていない人の場合は『歯の表面が磨耗し平らになっている』『舌の横側に歯形の圧迫されている後がある』などの特徴が見られることもあります。

そういったことから日常的に食いしばりを行っているかどうかを自身で客観的に判断することができ、歯に痛みなどの症状があらわれる前に対策を行うことも可能なのです。

<食いしばりの影響>
食いしばりを行っている場合、さまざまなところに影響を及ぼすことが判明しています。『歯に亀裂が入る、歯が欠ける』『歯が強くしみる(知覚過敏)』『セラミックなどの被せ物が破損する』『歯槽骨が内側に極端に隆起したり、出っ張ったりする』『歯周病の症状の加速』『顎関節に痛みを覚える』『輪郭部分の筋肉が発達し、顔が大きく見える』『肩こりになる』『偏頭痛になる』などです。

また、非常に強い食いしばりを行っている場合、歯に大きなダメージがあらわれていることが多いです。特に神経を抜く治療をしてある歯は注意が必要です。神経を抜く治療をした歯は、神経が残っている歯と比べて非常に脆く、強い力がかかると歯が割れてしまうリスクがあるためです。割れた歯は多くの場合、抜歯をしなければなりません。

神経を抜く治療をした歯の場合、大きな被せ物を入れていることが多いため、そういった歯がある方は注意が必要です。被せ物についても、銀歯ではなくセラミックなどの自然な歯に見える被せ物を入れている方は注意が必要です。セラミックは強い力がかかると割れてしまう欠点があり、日常的に歯に強い負荷がかかっている場合は大きく欠けてしまうことが考えられます。もし、そういった経験があるのならば、食いしばりをしているサインかもしれません。

矯正への影響
矯正への影響

歯列矯正をしている最中に食いしばりを行っている場合、治療への影響が懸念されます。その理由は、歯列矯正は歯を横に移動させているのに対し、食いしばりは縦方向に強い圧力をかける行動であるためです。

食いしばりによりあまりに強い力が継続的にかかってしまうと歯の移動が予定よりも遅れてしまう可能性があり、治療が長引くおそれがあります。また最悪の場合、歯が動かしたい方向とは逆の方向に動いてしまうこともあります。

このように矯正治療にも影響を及ぼしてしまう食いしばりをしている時は、矯正治療を一時中断し、食いしばりの改善から行う必要が出てきます。

食いしばりの注意点

食いしばりは原因を特定することのほかに、日常的に食いしばりをしているかどうかを自覚することも大切です。就寝時に食いしばりをしている場合、無意識に行われているため歯には非常に強い力がかかっているおそれがあります。

食いしばりは、歯ぎしりのように音を立てることが少ないため、気づかれることがあまりありません。そのため就寝中に食いしばりをしているかどうかを起床後にセルフチェックする必要があります。その方法は、『顎が疲れていないか』『顎関節に違和感がないか』『歯に痛みを感じないか』といったことを確認する方法です。

日中に仕事をしている時などにも、食いしばりをしている可能性があります。力仕事をしている方やスポーツ選手の方、また体を動かさずに集中する仕事をしている方も注意が必要です。

無意識のうちに行われる食いしばりも、起きている時であれば自分で食いしばりをしていることに気づくことができます。そのため食いしばりをしていることに気づけるよう工夫をし、意識的に食いしばりをしないように注意をすることも、食いしばり防止に効果があります。

<食いしばりの対策>
食いしばりは病気ではなく、緊張時やストレスがかかった時、そして全身運動によって行われる無意識下の行為であるため、根本的な治療方法がありません。そのため食いしばりを予防する、あるいは食いしばりを緩和する対策をすることが食いしばりへの治療となります。

食いしばりへの予防方法は食いしばりや歯ぎしり用のマウスピース(ナイトガード)を作ることになります。このマウスピースは矯正で使用する物とは異なり、歯を食いしばりや歯ぎしりの負担から守るためにある程度の厚みと強度を求めて作られています。

また、スポーツをしている時に使用するマウスガードも外傷などから歯を守るだけでなく、食いしばりによる歯の負担を軽減する役割を持っています。そのためスポーツや力仕事をしている方はぜひマウスガードを使用してみてください。

さらに力仕事やスポーツ以外で行われる日常的な食いしばりをしないようにする対策方法として『自律訓練法』というリラクゼーションが効果的と言われています。これは精神科でも行われている自己催眠法でもあり、全身のリラックスと心身の疲れを取り除く効果があります。そのためこの訓練法を行うことで就寝中の食いしばりを予防できる可能性が期待できます。興味がある方はぜひ詳しいやり方を調べてみるといいでしょう。

まとめ
まとめ

食いしばりは心身に受けたストレスによって加減が変わり、また毎日継続的にしているとは限らないのも特徴としてあげられています。そのため歯列矯正を始めることが必ずしも食いしばりの原因となるわけではなく、ストレスをいかにコントロールするかということが問題になります。

食いしばりが歯列矯正に影響を与えてしまう場合は、焦らずに治療を一時中断するか、食いしばりの対策と予防をするようにしましょう。